リス / Squirrel

2003/1/21公開、2009/5/更新

リス

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作品情報

解説

 自分の目指すべき方向性を自覚するきっかけとなったという点で個人的に大事に思っている作品です。

 折紙探偵団の面々との交流を通じて折り紙について考えることが増えました。例えば、各設計法が抱える問題点であったり、不切正方形で折ることの意味であったり、用紙形と完成形との関係性などなど‥‥、それらをどうにかして作品として昇華できないかと思っていました。一言で言うならば、折り紙で作る意味のある作品を作りたいということになるでしょうか。

 このリスは、前足を直角二等辺三角形で表すというアイデアだけがまずあって、その後は自分でもよく覚えていないくらいに一気に出来上がったものです。これしかない、というほどにシンプルにまとまってくれました。

 一気に完成した作品は、それまで自分が作ってきたものとはどこか異なる雰囲気を放っているようでした。この直前に作った別のリスが、まごう事無き前川設計だったため一層そのように思えたのかもしれません。展開図を見てみると見慣れた一値分子が少なく、「なんかこれって新しいかもしれない」とドキドキした記憶があります。

 最も興味をかき立てられたのが、展開図を折り上げた形でした。手足や尻尾が、そのような形でその位置に出てきて、仕上げの折りを加える必要が(あまり)ないのです。

 展開図的な折り線構造と最終的な完成形の間にいわゆる「基本形」に相当するものがないこと、幾何的な折りがそのまま作品造形へと繋がることは、折り紙を構造で捉えることの意味を理解しやすいものにしてくれるのではないだろうか? そこに、私の求めていた「折り紙で形を作ることの意味」が見えてくるかもしれないとふと思ったのですね。

 まあ、そういう理屈っぽいことを抜きにしても、「仕上げの折りが不要」ということ自体が単純に面白く感じられました。この路線を一つの方法論として突き詰めたらどうなるか。それも徹底的に、22.5度の折り線だけを使ってひたすら完成形に近い形に持っていけないだろうか? これは絶対面白いに違いない‥‥と思ったものの、目標とするものがハッキリとイメージ出来なかったり、断片的な構造しか得られなかったり、はたまたサボっていたりして(あれ?)、試みが新たな作品として結実したのは2年後の「馬」でした。

 また、「折り工程」という要素が重要な位置を占めるようになったのもこの作品からでした。以前にも折り図を発表した作品はありましたが、それらの折り工程は創作中で試行錯誤する内に自然と選択されたものであることが多く、折り工程を独立に考えるということはしたことはありませんでした。

 リスは色々と試行錯誤した結果、リズムよく折り進める工夫ができたと思います。折り工程を考えること自体がひとつの表現なんだと改めて思い至り、以降工程を含めてひとつの作品として認識するようになりました。

 そう言えばパソコンで折り図を描いたのも、これが初めてでした。色々と考えるきっかけを与えてくれた作品です。